経営力を向上させる計画
それが経営力向上計画であることは、もう名前から明らかになっています。
つまり経営力を向上させることを目的として、まずは経営計画を策定してから経営力向上計画の申請書を書くわけです。
そこで前回は、この経営力向上計画の申請書の書き方を細かく説明しました。
【参考情報】> 経営力向上計画の申請書の書き方を考える
しかし、申請書を書いただけで本当に経営力は向上するのでしょうか?
それはもう皆さま、よくご理解されておられると思います。
今回の中小企業等経営強化法は、もちろん経営力向上計画を認定した企業を優遇しようとしています。
つまり、国の言うことを聞いたご褒美です。
しかもメリットは金額に換算するとお小遣いに近いイメージ。
そうではなく、国が発するメッセージをしっかり受け止めてほしいのです。
彼らはこの国の優先課題である経済の活性化を目的に『この考え方で計画を作成したらうまいくんです!』と発信しているんです。
それぞれの主要な業界団体が検討したモデルケースと比較しながら計画を策定するというやり方です。
それらを踏まえて。。。何百という経営計画を診てきた中小企業診断士が、中小企業に合う経営計画の立て方を提案していきたいと思います。
今回はそんなシリーズの1回目です。
経営計画が持つ驚異的なパワー
ほとんどの中小企業では経営計画を立てる習慣はありません。
でも金融機関からお金を借りる時は、経営計画提出を求められますよね。
また、補助金が欲しくなった時も経営計画が必要になってきます。
そんな時にちゃちゃっと売上見込みを景気良さげに作って、利益が出るように逆算して作成するくらいでしょうか?
または、担当の税理士さんにそれらしい数値で数万円余分に払って計画資料を作ってもらう感じでしょうか?
まったく否定はしませんが、本当にもったいないと思います。
経営計画が持つ驚異的なパワーを活用せず、まったく違う使い方をしてしまっています。
私にとっては、本当に素晴らしい出会いをしたにもかかわらず、それにまったく気付いていないドラマの主人公を見ているような心境です。
というのは、経営計画には素晴らしいパワーを持っているからなんです。
今回はそれをしっかりと説明してまいりましょう☆
経営というのは、とにかく1人のチカラでなんとかなるものではありません。
1人事業者であっても、お客さまは1人じゃありませんし、仕入先も、外注先も、事業場所の大家さんや配達業者さんなどなどもう数えればきりがないほどです。
特にアルバイト・パート・社員さんなどなど従業員を持つ事業であれば、共にお客さまの喜びを追求する仲間が存在しています。
そんな仲間はいったいどんな気持ちで仕事をしているのでしょうか?
『あの社長は人柄がいいから』
『この会社の仲間が好きだから』
『生きていくために給料が必要だから』
働く喜びを感じているポイントも、ヒトそれぞれ違うと思います。
いずれにせよ、あらゆる価値観を持つこの仲間達が、一本の軸を中心に一丸となって、それぞれの特徴を活かして事業推進することが最も理想的な職場なのではないでしょうか?
それを束ねるための有効ツールが。。。この経営計画なのです。
驚異的なパワーの正体
経営計画とは、あるべき姿=ゴールに到達するための設計図なんです。
そのため、そこにはその職場の未来が表現されています。
例えばその未来が、とても素晴らしいものであればいかがでしょうか?
そしてその素晴らしい職場を具現化するためのやるべきことが書かれてあるのです。
ならばどうでしょう?
その一員である自分も、何らかしら貢献してみようと考えるのがヒトではないでしょうか?
最初は数人だけかもしれません。
でも、その素晴らしい職場づくりをすすめる計画が進んでいくならば、それが本気なのであれば、どんどんと賛同者は増えていくのではないでしょうか?
事業拡大は、お客さまの中でもコアなファンを増やしていくことが重要であることは言うまでもありませんが、これは社内でももちろん同じなのです。
いや、むしろ社内からの方がより効果は高いはずです。
そしてその計画に賛同した従業員が一丸となって、あらゆる工夫や努力を結集している姿は、お客さまにもちゃんと伝わるはずです。
また、これが一人事業者であれば尚更、経営計画は策定すべきだと考えています。
なぜなら、誰も指摘してくれない自分1人での事業運営は、どうしても視点がブレがちだからです。
常に楽観志向で積極的な行動を取りながらも、悲観志向で批判的な慎重さを同時に持つ才覚を持つ方ならきっと大丈夫でしょう。
しかし、普通の人間にはそのような才能はありませんよ。
経営計画の本来のパワー封印する多くの経営者たち
そうなんです。
経営計画は、ただ金融機関に渡して終わり、申請書を書いて終わりの存在にしてしまうかどうかは経営者の判断です。
でもそれは本来の使い方ではありません。
本来はその事業の未来を定義する。
その具現化のための道順が書いてあるナビゲーションなのです。
その道順が合っているかどうかが問題なのではありません。
それを前提で進んでいるという安心感が全体のスピードアップが図れます。
そりゃそうです。まったく迷わずに渾身のチカラを振りぬけるわけですから。
そして反応や答えが早く見つかるため、方向性の修正も早くなります。
多くの経営者は実はこの機能性には気づいているはずです。
しかしそのパワーを封印する選択をしているのです。
それはいったいなぜなんでしょうか?
経営計画がなければ、いきあたりばったりの出たとこ勝負。
一方で誰かに問われればそれらしい回答を反射的に言及することが可能。
でもその実は、無計画の反応主義。
その場の気分であらゆる方針が変わるため、従業員もハテナマークのオンパレード。
しかもその違和感に気づかないのは本人だけという裸の王様状態。
唯一雇用を維持できる糧は昇給だけとなり、その高利益体制を維持することが唯一の事業方針。
組織的な活動とはならず、いよいよ自分の才覚のみに頼らざるを得ない。
そしてそのまま時間は過ぎていき、年齢を重ねても事業を承継する人間が育たない。
育たない人材を無能評価していつしか従業員を信用できなくなっていく悪循環。。。
もう。。。いいですよ。
そんなに一人で頑張らなくても。
そんなに一人で背負わなくても。
まずは計画を立てましょう。
あなたの考えや作戦を文書に描きましょう。
そのうえで、従業員にこう質問しましょう。
みんな一緒にやってくれないか?
この計画に協力してくれないか?
そして、この会社に命をかけてくれないか?
これを言葉にしないから、これを従業員に言えないから、多くの経営者は1人で苦しむことになるんです。
『経営者だから、やはり従業員にカッコをつけなければ』
『なんだか能力がない経営者だと思われそうで』
『そもそも、従業員を信用していないし』
理由はそれぞれあるでしょう。
でもこのパワーを封印するのは得策ではないと考えますがいかがでしょうか?
ぜひ一度、ご一考くださいませ。
一方で、ここまで説明しても本当にそのままでいいという経営者がいらっしゃるのなら、それでいいんじゃないかとは思います。
1人で背負うスタイルが自らのベストチョイスなら、そういった会社でいいと思います。
もしそうでないのなら。。。
この経営計画の策定と説明は必須作業です。
ぜひ、これをきっかけに取り組む検討をしていただきたいと思います。