経営力向上計画という言葉をお聞きしはじめたのはおそらく最近だったのではないでしょうか?
それもそのはずで、平成28年3月に閣議決定された『中小企業等経営強化法案』の中で、『中小企業・小規模事業者等による経営力向上のための取組の支援』としてはじめて出てきた言葉だからです。
つまり、生まれたてなんですね。
そしてその法案が第190回国会にて成立し、7月1日から施工されました。
そんな、経営力向上計画について、今回は解説していこうと思います。
中小企業等経営強化法の中の経営力向上計画
『中小企業等経営強化法』についての解説はまた別途詳しくお話ししたいと思いますが、やはりこの経営力向上計画はこの法律抜きには語れません。
少し難しい話になるとは思いますが、極力わかりやすく解説したいと思いますので、少しお付き合いください。
『中小企業等経営強化法』とは、もちろん中小企業の経営を強化しようとする法律です。
現安倍政権の政策のメインは経済の活性化です。
そのためには企業数の99.7%と占める中小企業の活性化なくしてはありえません。
そのため、これまで中小企業支援策を多く打ち出してきました。
その一環としては、ものづくり補助金など新たな設備投資に結びつける施策
その加点の前提として、これまでは経営革新計画という計画を作成すると審査が有利に働いたのです。
しかし、この経営革新計画という計画は、中小企業における新たな取り組みを都道府県が認定する制度でした。
新たな取り組みとは。。。
(1)新商品の開発または生産
(2)新役務の開発または提供
(3)商品の新たな生産または販売の方式の導入
(4)役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動
いやぁ、法律用語ってほんとわざわざ難しそうに表現しますよね、苦笑。
つまりは、
(1)新しい商品の開発ないし生産する計画
(2)新しいサービスの開発ないし提供する計画
(3)商品の新しい生産の方法、または新しい販売の方法を採用する計画
(4)サービスの新しい提供の方法を採用する計画
など、を経営革新計画として認定しましょう!ということだったのです。
この計画を取れば補助金の採択が有利に働きますと。
しかしこれって、新しい取り組みしか認定されないんです。
だから補助金欲しさに、みんなこぞって無理やり新しいことを始める計画を作り始めたんです。
そうするとどうなったか?
ウソの計画が横行するようになってしまったのです。
せっかく、経営計画をつくって計画的に事業運営しましょう!っていうメッセージなのに、これでは本末転倒です。
そこで今回は無理やりでなく、経営力というチカラを底上げするための計画も認定する流れを作って、無理やり作る必要性をなくしたわけです。
これまでの『新しいことを認定する経営革新計画』
それに加えて『経営力を高め方を認定する経営力向上計画』
こういった位置づけです。
何が違うのか? それはまた別途解説したいと思ますのでしばらくお待ちくださいませ。
【関連情報】>経営力向上計画と経営革新計画との違いとは?
ではこの経営力向上計画とはいったどういう計画なんでしょうか?
詳細を見ていきたいと思います。
経営力向上計画とは?
経営力向上計画は、3~5年を計画します。
まずは経営力向上計画の記入項目を見ていきましょう。
1 名称等
記入項目:事業者の氏名又は名称、代表者名(事業者が法人の場合)、資本金又は出資の額、常時雇用する従業員の数、法人番号
ま、これは企業概要ですよね。ここか難なく書けます。
2 事業分野と事業分野別指針名
記入項目:事業分野、事業分野別指針名
ここが今回の経営力向上計画の特徴的なところです。
これまではまったくなかった事業分野別の指針が公開されています。
例えば、製造業であれば。。。
製造業として重視すべき経営指標があって、それを指針として提示するのでチョイスして計画・管理してくださいと。
そういったことです。
実際の管理指標としては、①労働生産性、②売上高経常利益率、③付加価値額などが挙がっていて、
事業形態に応じて一つ選択選択してくださいとの内容になります。
それぞれ目標数値が決まっていて、
①労働生産性 3年計画:+1% 4年計画:+1.5% 5年計画:+2%
②売上高経常利益率 3年計画:+3% 4年計画:+4% 5年計画:+5%
③付加価値額 3年計画:+1% 4年計画:+1.5% 5年計画:+2%
です。
これは目標数値であって、必ずしもこの目標でならないということではありませんが。。。
審査側はこれくらい狙ってくださいという指針だということです。
3 実施時期
記入項目: 年 月 日~ 年 月 日(計画期間)
こちらは冒頭のとおり3~5年間を計画します。
4 現状認識
記入項目:①自社の事業概要、②自社の商品・サービスが対象とする顧客・市場の動向、競合の動向、③自社の経営状況
それぞれを以下にて説明します。
①自社の事業概要
これまでの事業内容を記述します。
どんな事業を行っているか?その打ち上げ構成は?など、自社の事業に関して説明します。
なお、事業分野別指針の「6 経営力向上の内容」について、規模別に取り組む内容の数が指定されます。
そのため、自社がどの規模に該当するかをここで明記する必要があります。
②自社の商品・サービスが対象とする顧客・市場の動向、競合の動向
自社の商品・サービスについて、顧客の数やリピート率、主力取引先企業の推移、市場の規模やシェア、競合他社との比較などにおける、自社の強み・弱み等を記載してください。
③自社の経営状況
売上高増加率、営業利益率、EBITDA有利子負債倍率、営業運転資本回転期間、自己資本比率等の指標について、企業の規模や能力・改善可能性に応じ
て可能な範囲で分析し、記載してください。
この分析については、財務分析などを進める「ローカルベンチマーク」を使います。この分析は認定支援機関の支援が必要だと思います。
「ローカルベンチマーク」については別途詳細に説明したいと思っています。
【関連情報】>ローカルベンチマークとは?~中小企業を診断する仕組み~<
なお、もしご自分で進めたいなとお考えの特に小規模な事業者の方については、経営計画作成アプリ「経営計画つくるくん」があるそうです!
こちらの使用方法についても別途リポートします。
5 経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標
「目標指標の種類」は、事業分野別指針で定められた指標がある場合はその指標を記入してください。一方で、事業分野別指針がなく、基本方針を参考にしながら検討する場合は、「労働生産性」をまずチョイスしてください。
※ 労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量(労働者数又は労働者数×1人当たり年間就業時間)
6 経営力向上の内容
記入項目:事業分野別指針の該当箇所、実施事項(具体的な取組を記載)、新事業活動への該非(該当する場合は○)
それぞれを以下にて説明します。
事業分野別指針の該当箇所
事業分野別指針が定められている事業の場合、実施事項が事業分野別指針のどの部分なのかを記入して下さい。
一方で事業分野別指針が定められていない事業の場合は記入の必要はありません。
実施事項(具体的な取組を記載)
「4 現状認識」との整合が合うように、事業分野別指針(定められていない事業の場合は基本方針)を参考にして、経営力向上のために取り組む項目を具体的に記入して下さい。
新事業活動への該非(該当する場合は○)
もし実施事項が新事業活動に該当する場合は、「○」を記載してください。
※ なお、新事業活動とは、新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動を言う。
新事業活動の場合は、その理由を具体的に記入する必要があります。
新事業活動の取組は、新事業活動でない取組とは区分して記入して下さい。
7 経営力向上を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
記入項目:実施事項、使途・用途、資金調達方法、金額(千円)
実施事項欄には、「6 経営力向上の内容」の実施事項ごとの記号(ア~エ)を記入下さい。
使途・用途欄には実施事項ごとに、実施するのに必要な資金について具体的な使途・用途を記入します。
資金調達方法欄には、自己資金、融資、補助金 等を記入します。
なお、同じ使途・用途であっても、複数の資金調達方法によって資金を調達するのであれば、資金調達方法毎に項目を分けての記入が必要です。
8 経営力向上設備等の種類
記入項目:実施事項、設備等の名称/型式、単価、数量、金額
固定資産税の軽減を活用する時にはこの欄に記入が必要です。
実施事項欄は、「6 経営力向上の内容」の実施事項ごとの記号(ア~エ)の記入が必要。
経営力向上設備等を取得するのであれば、中小企業等経営強化法施行規則第8条に規定する要件に該当することを証する書類(=工業会等による証明書)を添付する必要があります。
計画づくりについて
本計画のスキームづくりは、まだまだ始まったところです。
特に、ローカルベンチマークの分析は、認定支援機関に頼ることになりますが、その分析はこれまで中小企業の診断士の訓練を受けてきた中小企業診断士でなければ、御社の正確な分析は困難であると思います。
【関連情報】>ローカルベンチマークとは?~中小企業を診断する仕組み~
一方で、ただの助成金目的であれば我々は無用の長物でしょう。
しかし、せっかく取り組むのであれば、本質的な計画づくりをお勧めいたします。
今後も新しい情報が入り次第こちらで発信していきます。