経営力向上計画策定において、いきなり出てきたローカルベンチマーク。
実は中小企業等経営強化法案で急にでてきた仕組みでもないんです。
もともと金融庁は、金融機関に対して、融資を検討する際には第三者の意見も取り入れるようにとお達しが出ていました。
しかし統一されたフォーマットなどなく、公平性を担保したまま具体的にどのように取り入れれよいのか、金融機関側からは非常にわかりにくかったのです。
そしてそれを具体化したのがローカルベンチマークというものでした。
今回はその解説をしていきましょう。
ローカルベンチマークとは
これはおそらく、あまり聞いたことがない方がほとんどではないでしょうか?
ローカルベンチマークとは、企業の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行うツール(道具)として、企業の経営者等や金融機関・支援機関等が、企業の状態を把握し、双方が同じ目線で対話を行うための基本的な枠組みであり、事業性評価の「入口」として活用されることが期待されるものです。 |
経営革新計画を作成するにあたり、これまで計画策定において一部を除く認定支援機関はほぼ印鑑を押しているだけでした。
ところが今回、認定支援機関はこの『ローカルベンチマーク』を活用せよ!とのお達しが出たのです。
つまり、このローカルベンチマークによってしっかり第三者目線で企業を診断せよとのメッセージ。
一方でこのローカルベンチマーク、一部の金融機関では手におえないと悲鳴が上がっています。
それもそのはずなんです。
実は金融機関には過去、融資のプロフェッショナルが存在していました。
対象の会社が安泰かどうかを見抜く鋭い目をもったプロフェッショナルが。。。
ところが長引く不況の影響をもろにかぶった業界に金融機関も数えられます。
やはり、そんな勘に頼るより。。。スコアリングシステム
つまり決算書の数値をPCに打ち込んだらある程度企業評価ができるシステムを重視しはじめました。
その決算書が節税のためにいじくりまわされていることを知っているにも関わらず、です。
そんな経緯を経て、いつしか融資のプロフェッショナルは姿を消してしまっているのが現状と聞きます。
さて金融機関も、そんな環境下でこんなお達しが出たものですからたまったものではありません。
けれど。。。
そんなに手に負えないものなのでしょうか?
今度はこのローカルベンチマークの詳細についてみてまいりましょう
ローカルベンチマークの使い方
ローカルベンチマークは、企業の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行うツール(道具)として、企業の経営者等や金融機関・支援機関等が、企業の状態を把握し、双方が同じ目線で対話を行うための基本的な枠組みであり、事業性評価の「入口」として活用されることが期待されるものです。
具体的には、「参考ツール」を活用して、「財務情報」(6つの指標※1)と「非財務情報」(4つの視点※2)に関する各データを入力することにより、企業の経営状態を把握することで経営状態の変化に早めに気付き、早期の対話や支援につなげていくものです。(※1)6つの指標;①売上高増加率(売上持続性)、②営業利益率(収益性)、③労働生産性(生産性)、④EBITDA有利子負債倍率(健全性)、⑤営業運転資本回転期間(効率性)、⑥自己資本比率(安全性)
(※2)4つの視点;①経営者への着目、②関係者への着目、③事業への着目、④内部管理体制への着目引用元: 経済産業省発表資料
通称:ロカベンと略すそうですね。。。なんだかやぼったいお弁当のようです、苦笑
さてここで「財務情報」と「非財務情報」の2つの視点で見ていくことが明らかにされています。
では、それぞれを見てきましょう
財務情報としての6つの指標
①売上高増加率(売上持続性) = ( 今期売上高 ÷ 前期売上高 )×100 - 1
ま、これは分かりますよね。売上の増加率です。
②営業利益率(収益性) = ( 営業利益 ÷ 売上高 )×100
こちらはもちろん稼いだ売上高のうち、営業利益の割合です。
③労働生産性(生産性) = (営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量(労働者数又は労働者数×1人当たり年間就業時間)
これは投入した労働時間あたりの付加価値額です。ひとりが1時間働くことで、どれだけの価値を生み出せる実力があるのかを他社比較できます。
④EBITDA有利子負債倍率(健全性) ≒ 有利子負債 ÷ ( 営業利益 + 減価償却費 )
これは簡単に説明すると、金融機関などから借入している利子がある負債を何年かかれば返せるか?という指標になります。
関連情報>>EBITDA有利子負債倍率とは?~まずEBITDAの読み方から理解する~
⑤営業運転資本回転期間(効率性) = (売掛金 + 棚卸資産 – 支払手形及び買掛金) ÷売上高 × 12か月
もちろんこの期間が短ければ短いほど効率性がよいことになります。
⑥自己資本比率(安全性)
これはもう定番ですよね。全資産のうち、自己資本でどれだけまかなっているか?という指標です。
財務指標としては定番なものが多かったですが、EBITDA有利子負債倍率ってのは珍しいですね。
近頃はソフトバンクが多様することで有名になった指標ですが、確かにキャッシュフローとして取り扱うならEBITDAはよいかもしれません。
けれど一方で、経営力向上計画の中での解説では、労働生産性が多く取り扱われることからすると、これからこの指標は利益率と同等に取り扱われる指標になるかもしれませんね。
では、次は非財務を見ていきましょう。
非財務としての4つの指標
①経営者への着目
○ 経営者自身について、ビジョン、経営理念
○ 後継者の有無
②事業への着目
○ 企業及び事業沿革
○ 技術力、販売力の強み
○ 技術力、販売力の弱み
○ ITの能力、イノベーションを生み出せているか
③企業を取り巻く環境 関係者への着目
○ 市場規模・シェア、競合他社との比較
○ 顧客リピート率、主力取引先企業の推移
○ 従業員定着率、勤続日数、平均給与
○ 取引金融機関とその推移
④内部管理体制への着目
○ 組織体制
○ 経営目標の有無、共有状況
○ 社内会議の実施状況
○ 人事育成のやり方システム
上記はまさに経営に熟知した第三者がヒアリングを元にまとめていく大変重要なプロセスになります。
それぞれの事業プロセスのつながり、そして事業モデルとしてのキャッシュポイントの位置づけ、業種・業態、あるいは企業1社1社違うこともあり得ます。
そのうえで差別化のポイントを図式化して表現する必要があります。
ここなんですよ!
金融機関にはもう融資のプロフェッショナルが少なくなってしまっている現状ではどこに頼ればいいのでしょうか?
商工会、商工会議所でその役割を担ってくれるところもあるかもしれません。
ぜひ、会員ならばそちらへ相談してみてください。
もしまだ指導員そのものがわからない状況であるなら、きっと専門家を紹介してくれるはずです。
会員でない方は、我々中小企業診断士に頼ってください。
あなたが本気で経営力を向上したいならお役にたてます。
一方で、補助金などが目的の場合は、税理士さんの方が確実に早くて、むちゃくちゃ便利に寝てても作ってくれます。
でもほとんどの場合はあなたが想い描いているものとは違う内容になりますが、補助金獲得のためです。
しっかりその税理士さんの言うことを聞いて、その通り関係者に対応してうわべで周囲を固めてください。
しかし絶対に本来の事業の目的だけは見失わないでいただきたいと切に願います。
また一方で、小規模事業者ならば、簡単な報告でOKになる可能性を秘めています。
それを可能にするのが、『経営計画つくるくん』というアプリです!
本件も近々リポートしたいと考えています。
関連情報>>経営計画つくるくんの使い方(経営計画作成アプリ)
それでは今回はここまで。
計画づくりは本当に大変ですが、この資料とまとめるのはぜひ第三者のチカラを借りて実施してほしいと思います。
なぜなら、計画書を作成する作業を終えて、仕事が終わった気になって欲しくないからです。
計画が完成したなら、これからが本当のスタートです。
そのスタートを心の底から楽しめる計画づくりをぜひとも携わらせていただきたいものです。